記憶の宮殿を知っていますか?

記憶の宮殿という言葉をご存じでしょうか?

これはフランスにある宮殿…というわけではなく、

日常でちょっとしたことを記憶するために知っておいて損はない

記憶のテクニックのことです。

これは驚異的な記憶力を覚醒させるための記憶の技で、
世界記憶力選手権という記憶力を競う大会のランカー達が使用しているものです。

世界記憶力選手権はたとえば、

・トランプ52枚
・写真30枚の順番
・30人の顔写真と名前
・80桁の数字
・50個の単語

これらをたった1分で暗記する競技です。

そんな超人的な記憶力をもった大会参加者たちは
皆、生まれつきの天才かというとそうではありません。

もちろん中にはサヴァン症候群という特殊な症状を持っていて、
小さい頃から見聞きしたものを絶対に忘れないような人もいます。

しかし、全米記憶力選手権優勝者の
アメリカのフリージャーナリストであるジョシュア・フォアはもともと平凡な記憶力でした。
彼はプロから1年学んだのちに全米記憶力選手権で優勝しました。

また、生まれつき記憶力も成績も悪かったイギリスのドミニク・オブライエンは30歳から記憶の研究を始め、なんとその数年後、世界記憶力選手権を8回連続で優勝しています。

世界チャンピオンでさえ、元々は物覚えが悪かったというのです。

ということは、特別な才能が無くても、テクニックを使えるようになれば膨大な量の情報を覚えられるようになります。

そのテクニックが記憶の宮殿というわけです。

記憶の宮殿とは

記憶の宮殿は、短い時間に大量の情報を覚えることに向いています。
さらにこの覚え方の性質上、順番を覚えるのにも向いているのです。
記憶の手順を見て頂ければ分かるでしょう。

簡単に手順を書きます。

1 記憶の宮殿を作る
2 アクセスポイントを決める
3 アクセスポイントに記憶を設置する

たったこれだけ。
下で詳しく説明しますね。

記憶の宮殿誕生の歴史

ここでは記憶の宮殿の起源について書いていきます。

その歴史は紀元前までさかのぼります。

記憶の宮殿は、紀元前五世紀の古代ギリシアの詩人シモニデスによって発明されました。

ある宴会場で、天井が崩れ落ち客人たちが死んでしまいます。
残された家族が彼らを埋葬しようとしましたが、
みな事故により無残な姿に変わり果てていたため、身元の判別ができません。

しかし、たまたま席を外していたシモニデスは、
誰がどこに座っていたか楽に言い当てることができました。
そのおかげで遺族は全員を埋葬することができました。

この出来事により、シモニデスは、
場所についての記憶が強く残りやすいことに気づきます。

シモニデスはこれがきっかけで、
場所に記憶したいイメージを結びつける、
「記憶の宮殿」という記憶法を編み出したのでした。

つまり、「記憶の宮殿」とは頭の中に作り上げられた場所に
記憶の対象物を設置していくという方法です。

この方法から記憶の宮殿は別名、「場所法」とも呼ばれます。

「宮殿」は記憶する対象物を設置するための場所を指しています。
この宮殿は何でもかまいません。

建物でもいいですし、
屋外の特定の場所でもいいですし、
歩き慣れた道でもいいですね。

宮殿という言葉に囚われなくても大丈夫です。

大事なのはイメージしやすいこと。
記憶の残りやすさは、このイメージの鮮明さにかかっています。

イメージが具体的であればあるほどいいです。

記憶の宮殿の作り方

ここから具体的な記憶の宮殿の作り方について書いていきます。

記憶の宮殿の記憶法では、
まず最初に宮殿(記憶するものを結びつける場所)を作ります。

この最初の段階がとても重要です。
この宮殿をしっかりと鮮明に作り、どこにものを置くか決めておくことで
後で実際に記憶するときにスムーズになります。
また記憶の宮殿は一度作ってしまえば、あとはずっと使いまわすことができます。

まず、宮殿選びが大事です。
つまり記憶する対象を置いておく場所を決めましょう。

この場所選びのポイントは、

・何度も訪れていてなじみがあり、イメージしやすい場所
・古い記憶にある場所がいい。
(古ければ古いほど長期記憶として定着している)
・居心地がいい場所
・置いてあるものや場所が変化しにくい
・景色が単調でない

以上のポイントに当てはまる場所としておすすめなのが、自分の家です。
今住んでいる家でもいいですし、昔住んでいた場所でもいいです。
上の条件に、より当てはまる方を選びましょう。

さあ、それでは実際に記憶の宮殿を作っていきましょう。

まず頭の中でその場所を思い浮かべてください。
そして「どこに何があったかな?」と考えながら歩き回ってみてください。
どういう順番でどこに何があるか確認しながらイメージを具体的に作っていくのです。

私の記憶の宮殿の歩き方をご紹介しますので、参考にしてください。

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幼少期の自宅を記憶の宮殿とします。

まず玄関の戸を開けて入ります。

そして左にげた箱があり、手前に傘立てがあり、
靴を脱いで上がる段差の前に何足か靴がおいてあるのを思い出します。
その中には少し外に出るときのためにサンダルが一足置いてあります。

玄関を上がってすぐ右に進むと正面に扉があります。
扉の手前、右手に洗面台があります。
洗面台は鏡が中央にあり、その両脇に棚があります。

蛇口がある台の下側にも扉がついた棚がありますが、
その中には下水につながる排水菅が通っています。

洗面台を後にしてすぐそこの扉をあけると、トイレです。
入って右手に便座があります。

今度は玄関から左手にある部屋に入ります。
そこにはベッドが右奥に置いてあり、右手前にはテレビがあります。
左手にはたんすが置いてあり、正面奥には窓があります。

部屋を後にして、玄関からまっすぐ少しだけ進むと右手に扉があります。
扉を開けると脱衣所があり、もう一つスライド式の扉を開けると浴室があります。

脱衣所に入って左手に洗濯機があります。

浴室に入ると正面に浴槽がありその上に窓があります。
浴槽には凹凸のついてふたがしてあります。
左手にはシャワーがあります。

浴槽と脱衣所を後にして、玄関正面の廊下をまっすぐ進むと台所があります。
台所に入ってやや右斜め奥に冷蔵庫がおいてあります。
直角に右に行くと調理スペースがあります。その上に窓。

台所をまっすぐ通り抜けると自分の部屋があり、
入ってすぐ右手に勉強机が、左奥にはベッドがあります。

台所に戻り、玄関の方向から見て左の扉を開けると居間があります。
居間に入ってすぐ左手にテレビがあり、中央にテーブルがあります。
奥には大きな窓があります。

居間に入って右の扉を開けると寝室があります。
寝室の右手にはたんす。奥には押入れ。

寝室入って左にいくと仏間があり、仏壇が右手に置いてあります。
中央には足の短いテーブル。
正面奥と左手に大きな窓があります。

以上が私の記憶の宮殿です。

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このくらい鮮明に思い出して頭の中で描写すると、
記憶の宮殿が形づくられて、定着していきます。

この作業を面倒くさがらずにしっかりと行うことで強固な記憶になります。

そして十分に記憶の宮殿を歩き回ったら、
記憶するときにものを置く場所を決めていきます。

アクセスポイントと呼んでもいいかもしれません。

このアクセスポイントは一度決めたらずっと使い続けるので慎重に決めましょう。
それぞれの違いが大きくて、わかりやすい目印があると良いです。

たとえば自宅であれば、部屋Aのテレビをポイントにしたら、
部屋Bのテレビはポイントにしないほうがいいです。
部屋Bでは棚にするなど変化をつけ、違いが分かるようにしましょう。

学校とかだと3年A組と3年B組の景色に差がないので、
あまり適さないかもしれないですね。

ポイントの数はいくつでもいいですが、
初めは10個か20個がいいと思います。
5の倍数がわかりやすいでしょう。

筆者の場合は

・玄関の戸
・トイレの便座
・玄関すぐの部屋のカーペット
・脱衣所の洗濯機
・浴室の浴槽
・キッチンのシンク
・自分の部屋のベッド
・リビングのテーブルの上
・寝室のタンス
・仏壇

この10か所に、順番に記憶するものを置くようにしています。

ものを置く場所は、できるだけピンポイントに決めたほうがいいでしょう。

たとえば、「この部屋のこの家具。」と決めておくと、
そこにものを置くイメージがしやすくなるので。

自分なりの分かりやすい場所を作ってみてください。
その際順番は分かりやすいようにしてください。

たとえば入口から近い順に巡っていくとか、
部屋の中で何か所かポイントを作るなら時計回りにするとか。

そして記憶を設置する箇所を決めたら、
順番に歩いて、それぞれの箇所を頭の中で通過してみてください。

上の例なら
玄関入って、トイレに行って、部屋に入って、次に脱衣所に入って、、、
という感じ。

だんだんと頭の中で高速で移動できるようにしてみてください。
そして慣れてきたら、順番を逆にして最後の場所から最初に戻ってくるとか。

あとは「何番目はここだ。」という風に覚えておくと
実際に記憶を置いたあと思い出すときに楽になります。

そんな感じで頭の中の記憶の宮殿のイメージを強固にしていってください。
より鮮明に、具体的に。

五感を使って情報をつけ足していってください。
この場所はこんな匂いだった、とか。
ここにあったこれはこんな手触りだったな、とか。
鳥とか虫の鳴き声がしていたな、とか。

一度思い出してしまえば、そこから記憶の宮殿が色付けされていきます。

そうやって作った記憶の宮殿を、
毎日歩き回ってみてください。
一日5分とかでもいいです。

ポイントを10か所作るとしたら、一巡に10秒もかかりません。
パッパッパと移動していけばいいです。
この歩き回る作業を数日続けてみて下さい。

そうすると記憶の宮殿に設定したポイントの箇所が
長期記憶化され、定着していきます。

記憶の宮殿を数日かけて十分に歩き回ったら、
いよいよ実践で使えるようになります。

記憶の宮殿の使い方

記憶の宮殿とポイントを作ってしまえば後は簡単です。

覚えたいときに、記憶の宮殿をイメージしながら、
ポイントを順番に巡り、記憶の対象を設置していけばいいのです。

このときなるべく大げさでファンタジーで突飛で面白いイメージにしてください。
インパクトを頭に残すことが大事です。

たとえば、自転車を玄関に設置するとしたら、
自転車をすごい形相でこいでいる人が自宅の玄関を突き破って入ってくるとか。
そんなイメージを作るのです。

そうするともう記憶は成功しています。

これを10個だったらそれぞれのポイントで1つずつ設置していきます。

そして数分後に思い出してみてください。
宮殿を順番に歩いていけば数分前に作りあげたイメージが頭の中で再生されるはずです。
そのイメージを見れば、記憶したかったものを順番に思い出せるというわけです。

ここでヒントですが、
一番強く記憶に焼き付けるには下品で過激なイメージにすること。
自分の頭の中だけですからなるべくインパクトが強いイメージをつくり上げてください。

このイメージを作る力がこの記憶法のカギなのです。
自由にイメージを作り出し、エピソードを考え、
関連付けられる人が記憶の達人に近づいていきます。

とはいっても、
記憶の宮殿は強力で、
じつはそれほど頑張ってイメージを考えなくても記憶できたりします。

ただし、記憶の宮殿を歩く作業をしっかり行っておくことが条件です。

10個程度であれば、
宮殿の場所にただ記憶するものを置いていくだけで十分思い出せます。

記憶の宮殿の使い道

使い道としては、一時的に記憶しておくものに使用するのがいいでしょう。
たとえば、

・買い物リスト

・テスト直前の詰め込み

・メモがないときの伝言

などがあります。

また

・写真記憶

にもっとも効果を発揮するのが記憶の宮殿です。

画像を順番に覚えるようなときには最適な方法となります。
歴史なんかで役に立ちそうですね。

基本的に記憶の宮殿は上書き式ですので、
一度ものを置いても新しいものを置きなおせば、
思い出すときはその新しいものが思い出されます。
(ごっちゃにならないのが不思議。)

ですので一度作った宮殿は使いまわせることになります。

逆に、長期的に記憶するときには、
覚える対象について、それ専用の記憶の宮殿を作る必要があります。

一度そこに記憶を置いてしまい、それをずっと保持しておきたいなら、
その記憶の宮殿は再度使うことはできません。

もし長期記憶に使う場合は、
本当に大事で覚えたいものだけにしましょう。

記憶の宮殿は作って固定化するのに時間がかかるため、
できるだけ使いまわすことを前提に考えます。

そうしないと記憶の宮殿として使う場所がだんだんなくなってしまうのです。

無限に作れることは作れるんですが、
記憶する量に宮殿の準備が追い付かないなんてことにもなり得ます。

そうしたことも考慮しつつ、あなたなりに記憶の宮殿を使いこなしてみてください。

まずは記憶の宮殿を歩いてみましょう。

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