こんにちは。
今回の内容は、直接的な脳トレのお話ではありませんが、
・効率的に脳を鍛えたい人
・脳トレをしてみたけど効果が無かった人
には役立つかもしれないお話。
その題目は、「頭の中のブラックボックス」についてです。
ブラックボックスって何なの?
このブラックボックスの言葉の意味は、外から見えないもの、ということ。
つまり、他人からは見えないもの、だということです。
これを脳について言うなら、あなたの頭の中で考えていることは他人には分からない、という事であり、逆に他人が考えていることは、外から見ただけではあなたには分かりません。
もちろん表情や顔色など、見ただけである程度、感じられる情報もありますが、相手の気分・感情が何となくわかったとしても、相手が頭の中で考えている事を正確に予測するのは難しいはずです。
そしてもちろん、そのように相手が頭の中で考えていること(思考)についても、言葉を使ってその思考をやり取りする(つまりコミュニケーションを取る)ことはできますが、それでもそっくりそのまま頭の中の考えを相手に伝えるのは難しいもの。
というよりも人は、言葉をやり取りして分かりあえたような気になってはいるものの、実は全然お互いのことを分かっていなかったりしますよね。
これについては、今回は掘り下げるつもりはありません。ただ、あなたも何となく経験があるはず。
ではその前提を押さえた上で、頭の中のブラックボックスの話に戻ります。
このブラックボックス、つまり頭の中(の思考)を外から見て、客観的、もしくは定量的に評価・判断するのは非常に難しいです。
例えば、心理学の実験や精神科の診察・アンケートなどでは、5段階の自己評価をさせることで、被験者または患者本人の頭の中の状態を、外から見た客観的な判断につなげようとします。
5段階評価の例
その中から例を挙げると、例えばADHD(注意欠陥・多動症)のチェックシートでは、
「物事を行なうにあたって、難所は乗り越えたのに、詰めが甘くて仕上げるのが困難だったことが、どのくらいの頻度でありますか。」
みたいな質問があります。
このような質問が何個かあり、それらに答えていくことで、ADHDかどうか、もしくはどれくらいその傾向にあるかが分かるわけです。
そして、このような質問に対して、
1全くない | 2めったにない | 3時々 | 4頻繁 | 5非常に頻繁 |
といった回答の選択肢が5つあり、この中から、被験者・患者自身に5段階評価のうちどれかを選ばせることで、本人の状態を客観的に評価・判断しようとします。
こういった5段階評価のような方法は、人の頭の中を客観的に判断するためによく用いられる方法です。
これは目的によっては有効な評価方法なのかもしれません。
過去の自分と比べて、その評価がどうなっているかが分かれば、相対的に評価が高いのか低いのか、もしくはどういった傾向にあるのかが分かりますからね。
しかし、これを他人との評価と比べて、統計的な実験と結びつけると、信憑性は怪しくなってきます。
さらには、何点以上はADHD、何点以下はADHDではない、みたいな判別方法も怪しい。(誤解が無いように言っておくと、実際の診断では「何点~何点の範囲ならADHDの可能性が出てきます。」のような言い方がされています。)
では何が怪しいのか。
例えば当たり前ですが、自己評価を低めにつける人と、自己評価を高めにつける人の2種類がいます。
あとはその時の気分で自己評価が変わる可能性もありますし、
・全くない
・めったにない
・時々
・頻繁
・非常に頻繁
という言葉を、
・ない
・ほとんどない
・たまにある
・かなりある
・毎回ある
みたいに変えるだけで、5段階評価のうち選ばれる数字が変わってくることも容易に想像できます。
つまり同じ質問、似たような質問でも、答える人によって微妙に受け取り方は異なってくるという事。
そして以上を一言で要約すると、自己評価という方法は「本人の基準や感覚に依存する」ということが言えます。
この「本人の基準や感覚」こそが、頭の中のブラックボックスにある1つの要素なのです。
繰り返しになりますが、この「本人の基準や感覚」によって評価が変わってしまう、という問題点は、過去の本人と比べるのであれば問題ありません。
一方で、他の人とこの自己評価の点数を比べようとすると、怪しくなってきます。
以上は自己評価の例に対してまず言える事ですが、このことを念頭に置くと、他にも脳や心に関する様々な事象において、この頭の中のブラックボックスが無視されがちである事に気づきます。
ではもう1つ例を挙げてみましょう。
中間テストの点数
中学校の中間テストを受けるとします。そして結果的に、理科のテストで100点満点を取ったとしましょう。
このとき100点満点を取ったので、中学の理科という科目を100%完璧に理解したと言って良いのでしょうか?
違いますよね。あくまで中間テストなので、その出題範囲の理科の問題で100%の正答率だったに過ぎません。
では、その理科の出題範囲については、100%理解していると言って良いのでしょうか?
これも違うはずです。なぜなら出題範囲の全ての事柄がテストに出たわけではなく、あくまでも出題範囲の中から選ばれた問題に答えられたに過ぎないから。
つまり100点満点を取ったとしても、出題範囲の中で、テストに出なかった部分については理解できていない可能性もあるのです。もちろん理解できている可能性もありますが。
あとはもう一つ、2~3問が選択肢式の問題だったとして、その答えを絞り込めずに最後は”勘(かん)”で答えたかもしれません。つまりその2~3問がもし間違っていたら、90点台もしくは80点台だった可能性もあります。
このように、被験者や受験者の頭の中では、様々な事象(思考の動き)が起こっています。
このように、「テストの点数という数字、つまり定量的な評価として出てきたもの」と、「見えないところにある”事実”」は異なることもあるんですね。
もちろん、生徒1人1人の理解度を評価する上で、テストの点数が役立つことも事実です。それも結構な精度で。
ただ、その評価には多かれ少なかれ抜け漏れもある、ということです。
これは考えてみると当たり前のことですが、しかし今一度、確認してみてください。
ここまでで「5段階自己評価の例」と「テストの点数の例」という2つの例を出しましたが、どちらも、定量的な結果が必ずしも「頭の中の事実」とはイコールではない、ということを示しています。
ここまでの内容を整理
ここで言葉の意味を整理しておくと、「頭の中の事実」とは多くの場合、「思考」のことですので、そう考えてもらうのが自然だと思います。ただし、その「思考」のように積極的(意識的)な機能の他にも、「感情」や「気分」みたいな自然発生的(無意識的)な機能も含まれます。
そして私は、それらの「思考」や「感情」「気分」などをひっくるめて、「心」と呼んでいます。
さらに「『心』は、物理的な『脳』が生み出している機能に過ぎない」と、私は考えていますので、逆に言えば、「私は『心が、脳とは別にどこかに存在している』とは思っていない」ということになります。まあいわゆるスピリチュアル系の考え方は持っていないという事であり、同じ考えの人は多いはずです。
話を戻して、以上を踏まえつつこの関係を簡潔に表すと、
頭の中で思考している事≠テストなどの定量的な結果
ということになります。
この不等式においてブラックボックスに当たるのは、すでにお察しの通り左側。
つまり、「頭の中で思考している事=ブラックボックス」になります。
定義を広げると「心=ブラックボックス」です。
このブラックボックスは、他人はもちろん、自分でも見えていなかったりしますが、それについては、また別の記事で触れるとしましょう。
そして、以上を踏まえつつ、上の不等式を書き換えると、
脳 ⇒ ???頭の中のブラックボックス(心)??? ⇒ テストなどの定量的な結果
というような図式になります。
これはつまり「脳の物理的(化学的)な働き」と「現象(結果)」の間には「ブラックボックス(=心という機能)」があるということです。
結論
なぜこんな話をしたかと言えば、今一度、頭の中のブラックボックスの存在を再認識してほしかったからです。
これは脳トレに限らず言える事ですが、他人が出した結果(成功など)を「再現」できるか否かは、このブラックボックスにある程度、左右されます。
よくNバックタスクは効果がある、効果がないという論争や、肯定派・否定派の論文がありますが、その結果だけを見て、
「Nバックタスクは効果があるんだ!やろう」
「Nバックタスクは効果がないんだ…。やめよう」
みたいな判断をしても、あまり意味がありません。(もちろんNバックタスク以外の脳トレも同じことです。)
他の人に効いたからといって、あなたに効くかどうかは分からないし、逆に他の人に効かなかったからと言って、あなたに効果がないとも限らない。
そして、脳トレをするにしても、ただ作業的・義務的にこなしていくだけでは、効くかどうかもギャンブル的になってしまいます。
なぜなら頭の中にはブラックボックスがあり、そのブラックボックスがどう働くかで、脳トレの結果もどうなるかが左右されてしまうからです。
つまり、脳トレを漫然とやるのではなく、頭の中で、もっと高度なことをしなければいけないわけです。
言い換えると、ブラックボックスをいかに見つめ、コントロールしていくか、という事。
これを出来るのはあなた以外にはいません。
外からは見えないので、自分で自分の心を観察するしかない。
とは言っても、自分でも見えない事も多々あるんですよね。。(詳しくは別記事で。)
そして、そんなことを書いてしまうと、「ブラックボックスを見つめ、コントロールする」という事に対して、「そんなことできるの?」と思われそうですが、私自身は、ある程度そのブラックボックスを見つめる作業をやってきて、(DNBという狭い分野ですが)結果を出すことができました。
その実践の中で私なりに考えた方法を、他の記事でお伝えしていきます。
さらに付け足すと、頭の中のブラックボックスについての研究は、実はある程度、世界でもされてきているのです。
それこそが「人工知能」の研究。
この人工知能についてはここでは詳しくは触れませんが、つまりは、頭の中のブラックボックスについては、ある程度、先人たちの研究成果があるということです。
もちろん、まだ解明されていない事だらけです。
ただ、先人の知恵を参考にしつつ、導き出してきた私の見解がありますので、それを今後の記事でお伝えしていきます。ご期待ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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