平均律という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
現代のほとんどのピアノはこの平均律という調律で音が設定されています。
調律とは音を細かく上げ下げして調整していく作業ですね。
細かいズレが音の濁りにつながるため微調整するのです。
さてここで重大な事実です。
「ほとんどのピアノは音がズレている。」
平均律自体がズレた音律だと苫米地博士は言います。
苫米地英人博士の「音楽と洗脳:美しき和音の正体」
この記事と合わせて読めば相互で理解が深まるように書きました。
最後まで読めば音楽の聞き方が変わるはずです。
普段音楽を聞くならば知っておいたほうがいいかも。
目次
絶対音感は間違い!?
多くの人はピアノのドミソの和音は美しいと思っています。
しかし、これは印象操作によるものだと苫米地博士は言います。
長い歴史の中で音に関する情報の操作が行われてきたということです。
では誰が何のためにそんな印象操作をしたのでしょうか。
ピタゴラス音階の発見
ドレミファソラシドの音階を最初に発見したのはピタゴラスでした。
三平方の定理の発見者としても有名ですよね。
三角形の辺の長さの関係のあれです。
ピタゴラスは鍛冶屋の鉄と鉄が打ち合う音が、綺麗な響きを奏でる瞬間を発見します。
それがきっかけで音階の実験を始めたのです。
その実験とは、モノコードと呼ばれる一本の弦を用意し、
その長さを変えることでうまく協和する音を探るものでした。
二つの弦を用意し、一方の長さを短くしながら、
ちょうどいい音の高さを探っていきました。
すると弦を半分にしたとき美しく響くことを見つけます。
基準の音をドとすると、
これがオクターブ上のドの音でした。
また2/3の長さでも響きあうことに気づきます。
これがソの音。
2/3にしたソの音をさらに2/3にしても良い響きになります。
しかしこれはオクターブ上の高すぎる音だったため、
長さを2倍にしてオクターブ下げました。
これがレです。
このようにして、もとの長さに2/3と2を掛け算していき、
オクターブを12音に分けていったのです。
ドレミファソラシドとド#レ#ファ#ソ#ラ#の12音です。
(#=シャープ=半音上げ)
さて、ここで余談ですが
音階はなぜ12音なのでしょうか。
ピアノの鍵盤では白鍵が7つと黒鍵が5つありますが、
白鍵が2つ少ないですね。
音階は12音?
ピアノの鍵盤を見てみましょう。
白鍵と黒鍵がありますが、
白鍵が二つ並んでいて
黒鍵がない箇所がありますよね。
この理由を知るためには、ピアノが発明されるまでの歴史を知る必要があります。
ドレミファソラシドの名付け親
まず、最初にピタゴラスが音階を発見しました。
これが紀元前。偶然綺麗な音の組み合わせがあることに気づいたのでした。
それから1000年以上後のこと。
次にグイードという中世イタリアの音楽教師が音の呼び方を決めます。
最初は賛歌の6つの句の音階をウト・レ・ミ・ファ・ソレと読んでいました。
これがドレミファソラシドの起源です。
呼び方は次第に変化していき、音が加えられ今のドレミファソラシドの形になります。
そしてさらに700年ほど時が経ちます。
次にイタリアのクリストフォリが、
爪で弦をはじいて鳴らす弦楽器の代りに、
ハンマーで弦を打って鳴らすシステムを発明しました。
これが現在のピアノのシステムです。
これが18世紀、ピアノの誕生となります。
ピアノの鍵盤ではよく使う音が白い鍵盤として手前に置かれました。
そして使う回数が少ない音を黒くして奥に配置しました。
つまり、ピアノというのは当時の有名な曲を弾きやすくするため、
自然とこのような鍵盤になったということになります。
最初に音階があって、ドレミファソラシドの名前は後だったんですね。
そのため、ミ#とシ#が鍵盤にないのは違和感がありますが、
もともと12音だったということでした。
さて、余談はここまで。
宗教と音楽
ここから本題に入っていきます。
ピタゴラスという人物は現代でも広く知られています。
しかしピタゴラスがピタゴラス教団という秘密結社の教祖だったことを知っている人は多くはありません。
ピタゴラス教団は宗教結社の一種ですが、極端な秘密主義をとっていたため
どんな教えがありどんな活動をしていたのかよく分かっていないようです。
実は三平方の定理もピタゴラス自身が発見したのか、
教団のメンバーが発見したのかがはっきりしないとのこと。
そんな秘密の宗教教団で神への対話の手段として、
音楽が研究されたのでした。
旋律の美しさ、そしてメロディーの心地よさ。
その音の規則性にピタゴラス教団の人々は神の存在を見出したのです。
つまり、神に近づくために音階の美しさ、
そしてその音を作るための数学的なシンプルさを追求していった結果生まれたのが、音律でした。
さらにピタゴラス音階の発見後も、
「音楽の規則性と美しさが神の御業を表すもの」として、
西洋文化に根ざしていきます。
時代の流れに乗り、
ピタゴラス教団が作り出した音階のノウハウは、
キリスト教に取り込まれていきます。
そしてピタゴラス音階に代わる新しい音階が作り出されます。
純正律の発見
ピタゴラス音階は2000年に渡って使われ続けましたが、
15世紀に入り新しい音階が発明されます。
純正律です。
その違いは振動数の比を見れば分かります。
・ピタゴラス音階
ド($\LARGE1$) レ($\LARGE\frac{9}{8}$) ミ($\LARGE\frac{81}{64}$) ファ($\LARGE\frac{4}{3}$) ソ($\LARGE\frac{3}{2}$) ラ($\LARGE\frac{27}{16}$) シ($\LARGE\frac{243}{128}$) ド($\LARGE2$)
・純正律
ド($\LARGE1$) レ($\LARGE\frac{9}{8}$) ミ($\LARGE\frac{5}{4}$) ファ($\LARGE\frac{4}{3}$) ソ($\LARGE\frac{3}{2}$) ラ($\LARGE\frac{5}{3}$) シ($\LARGE\frac{15}{8}$) ド($\LARGE2$)
より音の比率がシンプルな純正律が採用されたのです。
また別の角度から見ると、
13世紀から17世紀にかけて数々の大聖堂が建築されていったことも関係しています。
残響効果の高い大聖堂では純正律の和音が綺麗に響くのです。
反対にピタゴラス音階では不協和音になってしまいます。
大聖堂の完成はカトリック協会の勢力拡大を意味し、
その勢力拡大の力となったのがグレゴリオ聖歌です。
大聖堂で歌うグレゴリオ聖歌と相性よく、美しい響きを生み出すのが純正律だったわけです。
当時の教会と大帝の権力により、
純正律が広まっていきました。
しかし長くは続きませんでした。
200年ほどで次の音律が現れます。
平均律の登場
1636年にメルセンヌによって平均律が発明されます。
この平均律は音の響きの美しさを度外視し、
数学的な均一性を取るようにして生み出されました。
すべての和音が濁っているのです。
どのように作り出されたかというと、
その名の通り1オクターブを2の12乗根$\sqrt[12]{2}$で分割したものです。
$\sqrt[12]{2}$は12回掛け合わせると2になる数です。
ちなみにルート$\sqrt{2}$を正しく表記すると$\sqrt[2]{2}$になります。
よく見るルートは小さい2が省略されていたということですね。
ということは、この小さい2を12にするだけです。
つまり、$\sqrt[12]{2}$は12回掛け合わせると2になるというわけです。
$\sqrt[12]{2}$を計算すると、およそ1.06になります。
ということで$\sqrt[12]{2}$を1.06として考えましょう。
例えば基準となるドの音の周波数に1.06をかけると、半音上のド#になります。もしくは、ドの音が出る弦を1/1.06の長さにすると、半音上のド#の音が出ます。
長さと周波数は反比例するので掛け算を割り算に変えればよいのです。
要するに1.06で掛けたり割ったりすることで半音上がったり下がったりします。
そうして12回1.06をかけたところで一オクターブ上のドになります。
歴史に戻りましょう。
当時メルセンヌの発言力は大きく、
自然科学の時代ということもあり、平均律の均一性は受け入れられやすいものでした。
このようにして
ピタゴラス音階→純正律→平均律
という流れで作り出されてきました。
三種類の調律
3つの特徴をまとめると次のようになります。
・ピタゴラス音律
ピタゴラスが発見した。
グレゴリオ聖歌のような単旋律で美しい音を奏でる。
・純正律
ドミソの3和音の調和に優れている。
現代ではエンヤの曲に使用されている。
・平均律
全ての和音が少しずつ濁っている。
一台のピアノであらゆる調の演奏が可能。
転調に優れる。
平均律とピタゴラス音律を比較するとこのようになります
また平均律の和音ではこのようなうねりが生じます。
音の高さの単位
ここで余談です。
音の高さは周波数ヘルツ[Hz]で表せます。
これは音の波の振動数です。
もう一つ単位があります。
セントといいます。
1オクターブを1200で割った数値が、セントになります。
また1セント高くなると周波数は1.0005777895倍になります。
数字が出てややこしいですが、
長さに例えるとこれは一寸とセンチメートルの関係と同じです。
単位を変えただけですね。
音の振動数を表す単位はヘルツだけですが、
音の高さを表す単位はセントを合わせ2種類あるというわけです。
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